夕陽の向う
1-3

「一緒について行くわ。」

その日二人は、朝早めに家を出た。
都内にある病院までは2時間程度かかる。

診断結果を伝えるというその日のスケジュールとともに、病院の先生には

「家族の方と一緒でも良いですよ」

といわれた。

そうでなくても睦子はついていくつもりだった。


二人で、病院に行く前に東京タワーに昇った。

学生のころに行って以来で、ずいぶん垢抜けたような印象だ。

ちょっとおしゃれになったというか。
展望台から見える東京の街もずいぶん変わっている。

どちらの方角にもしゃれた高層ビルが見える。

「やっぱり、ここからだと東京の街がよく見えるね」

「東京に来ることもあまりないからね。」

これから聞く、診断結果に不安を覚えながら、二人はそれでも楽しい時を過ごした。


病院の先生から告げられたことは

①下咽頭にがんが再発している

②右鎖骨あたりと左肺にも転移している

③従って余命は3か月から6か月、長くて1~2年

④食事のできなくなった時にそなえて胃瘻をつくる

⑤抗がん剤を使うかどうか検討する


というものだった。



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