沈黙の天使
第6章 真実の扉
「ミア、今日は何か話はあるのか?」

数多の時を通りすぎ、白と黒の羽根は愛を唄い合うようになっていた。

「あなたは本当に天使の世界に憧れてるのね。そんなに天使になりたい?」

寄り添うように佇む二人。その瞳は相手を慈しんでいる。禁じられた愛だとしても、心まで制御されることはなかった。

「天使になりたい。天使になって毎日ミアと一緒に生活して、地上を眺めて幸せをみんなに振り撒くんだ」

青年の輝く瞳はミアにとって眩しく見える。
しかし二人の距離はなかなか縮まらない。

悪魔が天使にうつつを抜かすなと家族や長から言われ続けているケイ。

同様に、悪魔に近づくと生きて帰られなくなると戒めを聞かされる毎日のミア。

だが二人の距離が遠く離れることは想像もしていない。
ただこの時間が愛おしいだけ。この時間だけは奪われたくない。

それゆえ、これ以上近づいて相手に傷が付くのを双方が恐れていた。

愛を表すこともせず、天使界、悪魔界におおっぴらに知られても困らない程度の会話しかしない。
しかし、双方がしっかりと相手を愛し、慈しみ、暖かい眼差しを送っている。

抱きしめたい。口づけしたい。愛を伝えたい。触れ合いたい。
そのすべてを表にださないように毎日の短い時間が過ぎていく。
すぐ近くには監視の目がいくつもあったのだ。


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