沈黙の天使

「驚かせて申し訳ない。俺はケイ。この子の父親です」

ポカンと口を開けたままの薫は何がなんだかわからず腰が抜けたかのように床にへたりこんだ。

「ケイって、絵美ちゃんの夢の中に出て来た…?」

恐る恐る覗き込むように話し掛ける薫に、深々と頭を下げるケイ。

「そうです。あなたも天使だから俺の姿が見える。そしてあなたも天使だから、辛い思いをさせてしまったはず。
何もかも俺の我が儘のせいなんだ。ミアが死んだのも、天使が生まれるようになったのも、全部俺のせいなんだ」

申し訳ない、と何度も言う彼だが薫も絵美も訳がわからない。

「俺とミアの事は全部知ってるんじゃないのか?」

キョトンとした表情で絵美に話し掛けるが、フルフルと首を振るだけで何も言わない。

「えっ?じゃあミアは?」

少しだけ青ざめた表情で絵美と薫を交互に見ている。

「ミアだよ、ミア。お前の母親じゃないか」

絵美に問い掛けるが夢の中でしか見たことがない。

「もしかして、お前まだ産まれてないのか?」

絵美の羽根を手に取りまじまじと見る。

いや、これだけ輝いていれば産まれているはずだ、と何度か呟いているケイを、絵美と薫は弱冠不審な目で見る。
< 36 / 52 >

この作品をシェア

pagetop