沈黙の天使

「探したぞ。やっと見つけた。ミアにそっくりだったからすぐ確信したよ」

ベッドの横に佇んでいた彼はしきりに絵美の頭を撫でる。夢の中のケイが現実の世界にいる。夢と違うところは一つを除いて何もない。
悪魔の羽根は天使の羽根になっている。しかし、色は変わらぬまま。

『天使になったんだ…』

「そう。天使になった」

『?!』

思わず口元に手を当てる絵美だが、明らかに喋っていない。しかし、会話が出来た。

「何を驚いてる?親が子供の声を聞けなくてどうする?」

そう言ってケタケタと笑うケイ。

『子供?』

訳がわからずケイを凝視する絵美。

「そんな顔するなよ。父親を不審な目で見るな」

ぽんぽんと絵美の頭を軽く叩いた。彼には絵美の言葉も表情もすべて、きちんと読み取れているようだ。

『コンコン…』

部屋のドアが鳴る。昨日までと同じように薫が絵美を起こしに来た。

「絵美ちゃん起き…キャッ!」

ベッドの横にいる見知らぬ男に驚いた薫は、部屋の入口で固まっている。
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