短編集
『ねぇねぇ、映画見に行こうよ』


「……………」

『秀哉?』


「…っごめん!うん映画見に行こうか」


今日の秀哉…なんかおかしい。

いつもならもっとよく笑うのに、今日は一回も笑ってない…


あたしなんかしたかな?

『………』
したを俯きながら考え込むあたしに気付いたのか


秀哉はそっと手を握ってくれた

まるで、離れていかないようにと必死に繋ぎ留めているかのようにも思えた



だからあたしも
ギュッと手を握りかえした

あなたが離れていかないようにと…


ニコッ

あたしは彼へと満面の笑みを見せた


―ずっと一緒だよ

そんな思いを込めて


そんなあたしに答えてくれたかのように


秀哉はニコッ
っと笑ってくれた…


「よしっ、行くかっ
何の映画見る?」


いつもの秀哉だ…

あたしは笑顔の秀哉が好きなんだ

ほんとに好きなんだ


『うーんとねー、○○がいいっ』


「うわあ、ほんと奈美は子供だなあ…しゃーないっ今日は奈美に付き合ってやるかあ」


『やったあっ』


そう言ったあたしの隣にいる秀哉は、今日の朝見たようにどこか悲しい表情をしているように思えた…



けど、秀哉は笑ってた

不安を掻き消すかのように、にこにこと
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