彼-id-SCOUP
考えてみれば当然の話。
わたしは校舎の屋上を活動場所にしていたのだけれど、それはこの辺りでは1番“星を眺める”のに適しているという理由から。
つまり、
「“夜間の校内立入りは原則禁止”されてるんですよねぇ」
と、いうことなのだ。
「で、でも!」
だからといって今さらわたしの中であの場所以上の活動場所なんて思いつかない。
それに、
「高校案内に載ってた以前の天文学部の方々は屋上で活動されてたって……」
そうなのだ。
校外での野外観測もあったみたいだけれど、確かに校舎の屋上も活動場所のひとつに挙げられていた。
間違いなく。
「確かに、そうなのですが」
困った表情を浮かべた先輩はグラスに少し口をつけてから、
「当時は天文学“部”だったので、事前に学校に申請さえすれば夜間も屋上などで活動が許されたんですよ」
と、いうことは。
「ですが今回は“同好会”。その場合、そこまでの権限が与えられないので……」
「そ、そんなぁぁぁぁ」
多少は持てる権利の違いはあるだろうとは思っていたけれど、まさか1番重要な部分が引っかかるなんて。
他人からすればたかが場所かもしれないけれど、わたしにとってはされど場所。
あの場所で星が観れないのであれば天文学同好会を創る意味なんて、ない。
そのくらいに。
「な、何か方法とか、ないんでしょうか?」
すがれる藁(わら)があるなら難としてでもつかむつもりで尋ねてみるものの、先輩は「う~ん」と唸った後、
「現状では、なんとも……」
申し訳なさそうに答えるだけ。
「そう、ですか……」
他ならぬ生徒会長がいうのだから、本当に方法はないんだろう。
じゃぁ、やっぱり、諦めるしかない?
それじゃ何のためにわたしはこの高校に入ったんだろう。
さっきまでの幸せ気分はグラスの中の氷と一緒に溶けて消え、迫る夕暮れと共に気持ちも深く沈んでいく。