人の恋を笑うな
うちは昔から冬は毎日、基本鍋である


残りのだしが翌朝の雑炊だ…


今日はチャンコ鍋だとお母さんはいうが…寄せ鍋とチャンコ鍋の違いがわかってない


明日は大根引っこ抜いて水炊きになると思う


『乙女、紀子ちゃん、結婚するらしいよ。バリバリのキャリアウーマンだったのに、見合い相手に一目惚れしてだって』とお母さんが目を丸くして言った


紀子は一回目の引越しを手伝ってくれた一級建築士の彼女だ。紀子とは地元が一緒で高校の時からの付き合いで家も近い


『私にはなんの連絡もなかったな〜今日電話してみようかな』


『お姉ちゃん先越されたわね。多分私にも越されそう』と夏子が意地悪く笑った


『しかもお見合いなんて…紀子なら熱烈恋愛って感じなのに。ちょっとショック!』


『あんたもそれそろ考えたら?田中さんとの結婚も棒にふるし…その後なんかいい話しないの?』


田中さんとは2年前にフラれた元カレである


『あるわけないじゃない…もう私の事はほっときなさいよ』


『へええ…そうでもないと思うけどなぁ…』夏子はまた猫娘のように私を見た


『おや、乙女ちゃんいい人いるのかね?ばあちゃんに紹介しておくれよ』


『そんな人いないわよ、おばあちゃん。夏子が勝手に言ってるだけなんだから』


『乙女は…結婚なんかしなくてもいいよ…』とお父さんがぽつりと言った

『お父さん!こんなめんどくさい娘はさっさと結婚させるほうがいいのよ!多分30すぎても恋愛は小娘並なんだから!』


お母さんに痛いところをつかれて心がへし折れた…


せっかく帰ってきたのに針の筵…


今頃社長何してるんだろうな…
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