人の恋を笑うな
小さいのがぴくぴく動いていた


『予定日は来年の5月です。それまで一緒に頑張りましょう』先生はゼリー状の液体がついたお腹を綺麗にタオルで拭いてくれた


そしていま見た画像をプリントアウトして、渡してくれた


待合室にいた社長は私の姿を見て立ち上がった


『妊娠一ヶ月だって…予定日は来年の5月…ほらこの写真見て。この小さいのが私達の赤ちゃんよ』


『俺達の赤ちゃんか…乙女のお腹の中にいるんだな、この子が』


『うん』


私はマンションまで送ってもらうと、おとなしく寝てろと言われた


部屋に戻ってもまだ頭がぼーっとしていた


残ったカルピスをグラスにうつし、氷を入れた


懐かしい味が喉に優しかった。気持ちの悪さもすっかり消えた


私は落ち着くと実家に電話した


『もしもし、お母さん?』


『あら、どうしたのよ。会社は?』


『今日休んだのよ。気分悪くて』


『病院はいったの?』


『うん今帰ってきたとこ…お母さん、私妊娠してるんだって。一ヶ月』


『ええ!妊娠?よかったわ〜』


『来年の5月が予定日。しばらく夏子とは喧嘩できないわね』と私は笑った


おばあちゃんが電話に代わった


『おばあちゃん、私来年赤ちゃんできるんだよ。おばあちゃんはひいばあちゃんになるんだよ』


『ひいばあちゃんかい?おめでたいね、乙女ちゃんと武人さんの赤ちゃんだときっと綺麗な子、産まれてくるよ』


『ありがとう。だからさ、おばあちゃん長生きしてよね。ひ孫にカルピス飲ませてあげてね』


『うんうん、なっちゃんのひ孫もみたいから長生きするよ』


いきなり夏子が電話に出た


『お姉ちゃんやるじゃない!きっとお父さん聞いたら泣くわよ。電話しないでよね、夕飯の時発表するからさ。泣いてる姿写メして送ってあげるわ』…相変わらずひねくれたやつ…


あと、ねねさんや、紀子や瞳にも報告した
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