人の恋を笑うな
30日も、5月に入ってからも陣痛は起きなかった

予定は2日だったがそれもすぎてしまった


『あんた連休過ぎるかもしれないね』


『ホントだね。でも一応入院する支度だけするわ』


『明日からは武人さんも休めるんだろ?』


『やっとね。今日も帰ってこれるみたい』


『なんか美味しいもの作ってあげなさい。スタミナつくようなの』


私は考えて、前にねねさんに教えてもらったチキンの煮込みを作ろうと思った


お母さんといつものスーパーに行った


帰って煮込み開始


お母さんはベランダに干していた布団をたたいて取り込んでいた


私はキッチンの椅子に座って週刊誌を読んでいた


なんとなく腰が痛い…右手でとんとんと叩きながら雑誌をめくった


息があがってくる…でもお腹が痛いわけではない


雑誌を置いてテーブルに頭をのせた


うわぁーなんかマジでしんどい。目がしょぼしょぼするし…どうしたんだろ


『お母さん!ちょっときて〜』


『どうしたんだい?』


『腰と背中が痛いというか、だるい』


『そんな恰好で座らないでソファーに横になりなさいよ』


私はソファーに寝転がり背中をお母さんに向け、しばらく摩ってもらった


夕方には楽になり、また料理を始めた


武人さんが帰ってきて、三人でゆっくりご飯を食べた


楽しくしゃべってる時、なぜか生理痛みたいな痛みが鈍く走る


『どうしたの乙女?』


『なんか…生理痛みたいな痛み…そんなに痛くないんだけど』


『きたみたいね。ちょっと休みなさい』


『お義母さん、陣痛ですか?』と武人さんが慌てて聞いた


『そうね。まだキツイ痛みじゃないから大丈夫よ』


夜中になって痛みがひどくなってきた


『痛い!お母さん!』


『武人さん、そろそろ病院連れていきましょうか』


『わかりました』


痛みの間隔がまだある間に私達は病院に行った


『間隔は今どのくらいですか』と先生が聞いた


お母さんは『さっきまで30分でした』としっかりした口調で言った

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