鼓動より速く
「ホラ〜駄目じゃーん。本当に気分が悪いんカモよー」
「知らねぇよーそんなの。んじゃ神木だけが、来たら良かっただろ?」
「駄目ー。委員長は二人で一つだって、先生が言ってたじゃん」
「今時、言わねぇしー」

一生、続くような言い合いをボクは冷ややかな視線を送った。
まだ、ボクのガラクタの事は知らないらしい。
見ていても、仕方ない。
ボクから切り出す事にした。

「ゴメン、教室に行こうよ」

声が弱々しいと自分でも思った。

緊張から?
いや警戒?
けど、そんなの無関係に、ガラクタがざわめいた。
ボクはベットから降り、掛けていた学ランに手を伸ばした。

「小せぇなぁー山音」
「本当だぁ、私より小さいねぇー」

確かに。
それは、そうだろう。
ガラクタのせいで、ボクの身体の成長は遅れている。
髪の毛も細く、少し茶色いのも、ガラクタが影響しているらしい。
だから、小さいと言われても怒る気はない。
気分も悪くしない。
ガラクタのせいだから・・・。
「生れつき、身体が小さいんだよボク」
「へぇー良いなぁー私も山音君みたいに小さくなりたいなぁ」
「オレは嫌だネ!そんなんじゃあ走れない」

その言葉に、ボクは一瞬で反応していた。

「多田君は何かしているの?」
「ん?野球だ!もう八年してる」
「やっぱり、小さいと走れないの?」
「あん!?当たり前だろ?デブじゃあ走れねぇーけど、ある程度は身体がデカくないとナ!」

ボクは自然と下を向いていた。 やはり。そうかぁ。
ボクの身体は走る条件が悪過ぎる。
ガラクタに。
ガラクタのせいで、成長が遅い身体。
全然、駄目だ。

「大丈夫ー?山音君?やっぱり保健室で寝とく?」
「あ、大丈夫、大丈夫!早く行こう」

ボクは二人に連れられ、教室に向かった。
二人はボクの前を歩く。
目線は多田君の身体に注いでいた。

制服の上からだから、わかりづらいけど、良い身体をしていると思う。
ボクに、無いモノをいっぱい持っている感じだ。

良いなぁ。
普通に何も気にしないで走れる身体で・・・

「山音は部活、何か入るのか?」
「え?」
「だからクラブ、入るのか?本当に大丈夫か?おまえ?」

ボーとして、多田君の声に反応出来なかった。
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