鼓動より速く

4.中学

予想通り、入学式を遅刻した。
新入生の中で、ボク一人だけが保健室に居た。
小学生の時もそうだったが、ボクにはお似合いの場所だ。

白い世界で、薬の匂いが染み付いている。病院ではないけど、限りなく病院に近い部屋。
人間は、こういう風な場所で、生まれ、こういう風な場所で、死ぬ。

ボクの場合は人生の大半は、この部屋なんだろう。

入学式で保健室スタートは先行き不安だ。原因を作ったおじさんは、

「悪い悪い」

と言っていた。
けど、目は悲しそうだった。

ハルカは、あのまま、ベットの上で眠ったまま、起きなかった。

「ハァ」

保健の先生も居ない部屋で、ボクはすっかりお気楽ムードでくつろいで居た。
微かに聞こえる入学式の音楽が聞こえている。
三年生が挨拶でもしているんだろう。
体育館で、式がしているらしい。結局、式に出ていてもボクはここに居る。

体育館は寒い。
ガラクタが長時間、耐えれる訳が無い。

ボクも休めば良かった。
本当、ガラクタだお前は!
心臓を睨み付け、ボクは布団に潜った。




「もしもし?」
「おーい」

「ん?」

ボクは寝ていたらしい。
上から降って来る声で、やっと身体が覚醒を始めた。

まだ開かない瞼を無理矢理、開き声の主を見た。

真新しい制服を着ている女の子。同じ男の子。

女の子は髪が長く、ほんのり茶色。顔は大人っぽく、眉も弄っているのか、整っていた。ボクを見詰める瞳はパチパチと開閉を繰り返す。

男の子は茶色肌に視線がいった。こんがり焼けて、いかにも野球少年って感じだ。顔も迫力がある。この男の子も大人っぽい。

「起きた??私、神木ユイ!初めまして!山音ミノル君!私とこっち、多田トーマが1Bの学級委員長だから、よろしくネ」
「・・・」

早口というか、勢いというか。
擬音で言えば、バァーって言われたって感じだ。
単語の発音が良いのか、良い目覚まし時計になりそうと、ひそかに思った。

「ってか、早く起きろ!先生が呼んで来いっていうから、わざわざ来てやったんだ!」
「・・・」

絶対に、学級委員長を自ら志願したんじゃあない。推薦か、ジャンケンに負けたんだぁ。声も態度も苛々しているのが、手に取るように分かる。
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