鼓動より速く
ボクの命が簡単に、そこにある。

このカプセルを飲まないと、ガラクタは本当にぶっ壊れる。何も出来ないまま、ボクは地面に倒れ、呼吸困難で消えていく。
それを免れるためには、薬を飲まないといけない。

ボクは瓶を取り、フタを外し、中から一粒、カプセルを取り出した。

白いカプセル。

本当に味気ない色。
真っ白で如何にもって、感じが嫌いだ。
ドロップのように色んな種類の色があれば、少しは違ったと思う。

毎日、同じ色。
毎日、同じ白。
毎日、生きるために飲むカプセル。

自分が機械になったようで、本当に生きているのか、分からなくなる。機械的に飲み続けないと生きていけないボクは、ロボットと変わらないんだろうか?

そんな疑問符はいつも拭えない。

ボクはこの問いに対して、単純に、

「仕方ない」

と思う以外、答えを持ち合わせてない。

・・・・不意に嫌な記憶が駆け巡る。
人はそんなボクを可哀相と言う。
命を大切に。
とか、自分勝手な言葉を無防備なボクに投げてくる。

分からないくせに!!
人並に生きれない人間じゃあないくせに!!

ボクはカプセルを勢いよく、口の中に入れ、ペットボトルの水で流し込んだ。
そして足早に家を出た。





無意識に階段を使い、マンションのエントランスを抜け、道に出た辺りでやっと、怒りで心音が速くなっている事に気付いた。

「情けない」

自分の弱さに、急に恥ずかしくなった。
何故、怒りを感じたのか?
何故、あそこまで、悲観的になったのか?
いつも、考えない事を考えたからだろうか?

ボクは少し唸り、走りたい欲求に駆られた。

ガラクタを装着しているボクは、走っていけない。

冷たい外気。
激しい感情。
そして、運動に、ガラクタは激しく反応する。

全力で走れば、たちどころにガラクタは音を立てて砕ける。

経験上、全力疾走四秒で、倒れて意識は無くなる。
我ながら、笑える。
四秒の全力で、三途の川を渡るチケットをゲット出来る訳だ。
ボクは拳を握った。

人の居ない住宅街。
まだ街灯が灯り、ほの暗い。
住民は、まだ寝ているのか、人の気配が無かった。

ボクに与えられた道が、目の前に伸びている。
< 3 / 19 >

この作品をシェア

pagetop