すれ違い続けて
「わかったよ」
「マジ?!ありがと-本っ当感謝する!!」

と、いうわけで。
やたら肌を露出させた女と、花火大会を楽しむことになった。
俺も拓もテンションを上げてその場を盛り上げる。
先輩の顔を潰すわけにはいかない。
拓なんか、無理してんの見え見えだったけど、何も言えなかった。

「汰衣夢くん♪わたあめ一緒に食べよっ」

女の1人が俺に腕を絡ませながら、甘ったるい声で言う。

「いいよ。じゃあ、買いに行こっか」
「やったあ♪」

ふと拓を見ると、両腕に女をくっつけて困っていた。
…取り合いされてるし。
と、拓が一点を見つめたまま、動かなくなった。
不思議に思って視線を辿ると、そこには目にいっぱい涙を溜めて、拓を睨んでいる美九ちゃんがいた。

「美九…」
「ひどいよ…っ拓…。ひどいよ!」

美九ちゃんはそう叫んでそのまま走って行ってしまった。
その後を芽衣ちゃんが追う。
途中、芽衣ちゃんが俺を振り返った。何か言おうと口を開いたが、そのまま芽衣ちゃんは走って行ってしまった。
…何を言おうとしたのだろう。
彼氏でもないのに、「違うんだ」って?

拓は、その後何も話さなくなってしまった。俺は無理に帰らせてもらって、拓を家へ連れて帰った。

拓と美九ちゃんは、どうなってしまうんだろう。
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