この話の主人公と、主役の一人でもあるストーカー少年は、まったく異なる存在のようでいて、実は非常に近しい存在です。
作中でも語られますが、お互いに報われぬ思いを抱え、自らの求めるような愛を掴もうとするのですが、それを実現する手段や方法が悲しくも空回りしてしまいます。
主人公は少年のいびつな愛に気づき、少年は主人公の恋愛ゲームを悲しげに見つめています。
二人は似たもの同士、あるいは目を逸らしたい自分自身のようにも思えます。
やがて少年はストーキングをやめ、主人公は先輩と別れます。
その後偶然に出会った二人は、互いに笑顔をかわして去っていくのですが、このシーンにこそ、この作品のテーマが現れているといっていいでしょう。
道の向こうからやってくるもう一人の自分に、笑顔で向き合える。
そこに、ようやく愛らしい愛が見えるような気がします。