いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「サエコ、お前いい加減にしろよ…」

久世玲人がサエコの前に立ち、うんざりしたように吐き捨てた。


「だって…!!」

それでも諦めきれない様子のサエコは、すがるように潤んだ目で久世玲人を見つめている。


サエコ、久世玲人のことが本当に好きなんだろうな…。

恋愛に疎い私でも、その目を見れば気持ちが明らかに伝わってくる。

すごいな…。こんなにも真っ直ぐ自分の気持ちをぶつけられるなんて…。まぁ、少々気性が激しいとも言えるけど…。



そんなサエコの様子に、久世玲人も「はぁ…」とため息を吐いている。


「サエコ、ちょっと来い」

そう言いながら、大人しくなっているサエコの手を取り、私に視線を送った。


「菜都、授業サボるから」

「え…。あ、うん…」

サエコを突き放すのかと思いきや、予期せぬ久世玲人の行動に一瞬驚いてしまった。


そして、久世玲人はそのままサエコの手を引き、この教室から連れ出している。



どこへ行くのか知らないけれど、サエコの手を引く久世玲人の姿に少々複雑な思いを感じながら、私は教室から出て行く二人を黙って見送った。

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