いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「……ねぇ久世君」

何故だかどうしても気になって、聞いてみることにした。


呼びかけると、「何だ?」と久世玲人の視線が真っ直ぐ私に向く。


「あの、…昨日サエコ、さんと、どうなったの…?」

「サエコと?」

私の問いかけに、久世玲人は一瞬怪訝そうな顔をしたものの、「……あぁ」とすぐに思い出したようだった。


サエコと何かあったんだろうか…


黙って続きの言葉を待っていると、久世玲人は私を見下ろしながら、ニヤリと口の端を上げて笑った。


「気になる?」

「えっ!?い、いや、だって、私も当事者だったし…、っていうか、私がサエコさんを怒らせてるようなものだし…」

気になる、って素直に言えなくて、慌てながらもっともらしい言い訳をするけど、久世玲人のニヤニヤとした笑みは治まらない。


なんか、からかわれてる気分だっ…!!


恥ずかしくて真っ赤な顔をしながら俯くと、笑われながらポンポンと久世玲人に頭を撫でられた。


「何もねえよ。サエコには、きつく言っといたから」

「きつく…?何を…?」

思わず顔を上げて久世玲人を見ると、今度は優しい笑みが浮かんでいる。


「簡単に言うと、もう俺に構うなってことと、菜都をいじめるなって」

「いじめるなって…」

小学生じゃないんだから…。


ほんとに簡単な説明だけで済ませた久世玲人に、あまり納得いかないと目で訴えてみた。


「もうサエコもお前に何も言わねえよ。また何か言ってきたら、俺に言え」


あのサエコが諦めるなんて、久世玲人は何を言ったんだろ…。

2人の間でどんなやり取りがあったか気になるけど、……教えてくれないみたいだ。

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