いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
少し考え込んだのが分かったのか、佐山君は続けて教えてくれた。

「ほら、停学中の久世の家に行った時。次の日なんか、目を腫らして学校来るし。その時かな」

「あ……」

「原田さんって、どちらかというと大人しいタイプでしょ?皆の前では自分の感情を前面に出さないっていうか…、遠慮してるっていうか。押し通さないでしょ?あ、別に演じてるって言いたいわけじゃないよ?」

「う、うん…」

「それなのに、あの時は久世に会いたいと言ってきかなかった」

「……うん」

「目が腫れるほど泣いたのも、感情的になったからだって言ってた」

「……うん」

「ここまで原田さんを昂ぶらせる久世は、……やっぱり僕とは違うって思った。きっと、原田さんの心を動かすのは久世なんだって」

「…………」

「だから……、原田さんを笑顔にできるのも、僕じゃなくて久世なんだって、そう思ったんだ」


あの時のことで、そこまで分かってしまうのは、それだけ私のことを見てくれていたっていうことだ。

その想いの強さに、やっぱり胸は苦しくなっていくばかりで。


「……ごめんなさい…」


応えられないその想いに再び謝ると、佐山君がフッと笑った気配がした。


「謝らないで、原田さん」

「でもっ…」

「謝られる方が、……ツラいかもしれない」

「…っ」

また、ごめんなさいと言いそうになって、口を噤んだ。


「せっかくなら、笑ってお礼を言われた方がいい。僕も、原田さんにはありがとうって言いたいし」

「でもっ…」

「いいからいいから。……ほら、お互いありがとうってことで、握手しよう」

はい、と右手を差し出す佐山君に、私もおずおずと右手を差し出した。

まるで、さようならの握手みたい。


ゆっくりと重ねられ、佐山君の力強い手がギュッと私に伝わってきた。


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