JUNKー衝動ー
「あの子の体には大量の出血をするような傷は無い。
…女の子だから服を脱がすわけにはいかないからぱっと見だがな」

そこでヤナセは一回息をついた。

「それにあの付着の仕方は外側から…って感じだった。
よって彼女の血液ではない…と思う」

まるで数学の解答かと思うような答え方。
そのくせ、ヤナセの声は自信無げに小さくなっていた。


…コイツも戸惑っているのか。


「……じゃあ…誰のだよ…?
何であの子は…血塗れなんだ…?」

「わからない」


重い口を努力して開いたのにヤナセに即答された。

「…だよね」

俺は呟いて己を嘲笑した。

ヤナセが知っている訳がない。
彼女を拾ってきた俺自身知らないのだし。

…聞く方が愚かだ。


彼は腕を組み、考えるような体勢をとる。

「恐らく…何か事件にでも巻き込まれたんじゃないか」

ヤナセはそう言ったが、俺は見当はずれの、別の事を口にした。


馬鹿だと分かりながらも問を口にする。


「…生きてると思う?」
「…さあな…」


彼の発言を無視し、全く別の話を付き合ってくれたヤナセは割といい奴かもしれない。


何より、俺が言えなかった主語を読み取ったのに感心した。



−−−『あの血の主は』

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