きみといつまでもいたい
オープンから取り出されたクロワッサンは、見た目は少しいびつだが、こんがり焼けて美味しそうだ。
不器用な聖夜だけれど、年季だけは一人前だ。
なにせ毎日曜、こうして鍛錬を積んでいるのだから。
「この一番綺麗なやつは、ママンのだよ。
ミアと樹おじさんの分は、次に焼く分から選ぶといい」
彼の焼くクロワッサンを目当てに、叔父の樹も日曜の昼には、ひょっこり顔を出す。
樹はカナダでの任期を終えて、数年前に帰国していた。今は東京の大学で、スポーツ科学を教えている。
「どうして、ママンのが一番なの?」
「それは、パパがママンを一番好きだからだよ」
「ミアは一番じゃないの?」
ちょっとむくれて美亜が聖夜を下から見上げた。
「う~ん」
と唸った聖夜は、言葉を探した。