先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「亘理くぅーん」


甘く低い声でそう囁かれ、酔いもあってもたれかかるように隣の席を見てみれば、そこには和希さんが座っており、僕を見て極上の微笑みを浮かべている。


「和希さん……」
「なにをヘコんでるのかしら? 良かったらオニーさんに相談してみない? 」
「オネーさんの間違いじゃないの? 和希君」
「うるっさいわね、クミちゃん。ま、うるさいババァは放っておいて、まずはシャンパンで亘理君の失恋と業界デビューに乾杯しましょ」


シャンパンと聞いたクミさんは『ババァ』と罵られ、額へ立てていた青筋をすぐに引っ込めるとイソイソとフルートグラス2つにバンペリのボトルを目の前へ出す。


「じゃあカンパーイ」
「……あんまり嬉しくないんですけど、乾杯」


グビグビと一杯目を飲み干した後、僕は和希さんに向けて相談を始める。

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