先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
夜8時、1日の仕事を終えてマンションの部屋へ戻ろうとしたがどうにも足が進まない、帰れば宮澤さんが鬼のような形相で待ち構えているだろうから。


以前、目の前でオートロックの開錠をした時、番号をすっかり覚えてしまったらしく僕が留守でも上がりこんでいた事が何回かある。


きっと今日もそうだろう、間違いなく


『玄関開けたらコンマ一秒でスパーン! 』


という目に遭うに違いない。


震える手でオートロックを開錠し、恐る恐るドアノブへ手を掛けてキュッと下へ向ける。


ゴゴゴゴゴ……ほら、どこかの少年マンガで見たような恐ろしいオーラが放たれる時の音が聞こえて来るじゃないか。


開けちゃダメだ、ここから早く逃げなきゃ。


待て、ここは僕の家だ、何をためらっている?


でも開ければあの悪魔が牙を剥いて襲い掛かって来るに違いない、そんな恐ろしいこの扉を開ける訳には行かないんだ!
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