先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
イジらないで下さい
座禅の時間が45分に伸びた頃、やっと出来上がったプロットを目の前に宮澤さんは不機嫌そうに鼻を鳴らした。


それもそうだろう、相手役の兄弟として明らかに彼女をモチーフとしたドSなお姉さんを創り出してしまったのだから。


「あの、やっぱり姉の果歩ってキャラクターはマズいですよね」
「マズくはない、だがパンチに欠ける。それと何だ、この夏帆と主人公の兄がくっつくっていう安易な設定は! 敵同士だろう、絶対にくっつかないような設定に変えろよ」
「でも皆が皆ハッピーエンドな方が読み手も楽しめるんじゃないかと」
「それがダメなんだよ、だからお前はカスなんだ」


バッグから赤いローソクならぬ赤いペンを取り出し、その設定が書いてある箇所にバツを付けて付き返して来る。


では一体どういう設定にすれば良いのだろうか? そう聞き返したいけれど、どうせムチを食らうだけだから止めにして、自分で考えるととりあえず引っ込めた。


「今日はこれから行かなきゃいけな場所がある、そうだ、お前も来い。なかなか面白い場所だから」
「夜の8時を過ぎてるのに」
「金曜の夜に家に居る方がどうかしてるだろ、来い! あ、その前に着替えろ。スーツ位持ってるだろ」
「はい」


こうしてスーツに着替えさせられ、連れて行かれたのは……。
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