先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
そう決めて尋ねたのに、冷酷非道の宮澤さんは


「おいおいおいおいおい、それでも元売れっ子ラノベ作家かぁ? テメェはよ、自分の作品に対する作家としての思いいれとか何にもねーのかよ? 」


ソファから立ち上がって人差し指で僕の顎を持ち上げると、下目使いに睨み付ける。


「でも、携帯小説なんかに思いいれなんて出来ません」
「するんだよ、ヴァーカ。しなきゃウケねーの、あたしのリサーチでは思いいれしてナンボ、自分の半生記を書いてナンボ、読者や他の作家と心温まる交流をしてナンボなんだからよぉ」


無理だ、ありえない。


これまでの僕の作品は思いいれなんか無縁だったし、それに自分の半生記なんかドラマにしたって5秒で終わるレベルだし、年下な上に性別の違う女の子の読者との交流なんかまず無理だ。


「もう降りていいですか? この仕事。ランキング1位取って書籍化して再デビューなんて無理ですよ」
「降りたきゃ降りろよ、その代わりテメェの作家生命はココでオシマイだからな」


二度目も睨みを利かされて、更に一番恐ろしい言葉を与えられて……。

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