大好き‥だよ。
『ありがとう』

『ううん』

ゆっくりと目を落とし、俊チャンの肩にそっと凭れた。鍛えられた肩はゴツゴツして男らしかった。

それから私達は、しばらく何も話さずにベンチに座っていた。


穏やかな時間が流れる中、1度だけバス停にバスが停まった。日曜日ということもあってか、下りてくる人は1人もいなかった。バスの運転手は、乗るのか乗らないのか分からない私達を見て躊躇っていたが、私が軽く会釈をすると優しく微笑み、クラクションを長めに鳴らして走り出した。

徐々に小さくなっていくバスを見つめていると、背後からカサカサと草が風に揺られている音が聞こえてきた。


『風‥強くなってきたね』

『そうだな。そろそろ帰るか?』

うん。そう返事をしようと思ったとき、風は吹いていないのに草が左右に揺れた。

『ねぇ‥俊チャン‥』
『ん?』

今、何か動いたよね?

そう言おうとしたけど、俊チャンは気づいていないみたいだし。私の勘違いかもしれないと思い直し、首を大きく横に振った。でも‥

もし、草むらに何かが隠れていて、それで突然飛び出してきたらどうしよう‥。一人で勝手な想像をして怖がっていた。

『どうした?』

ギュッと俊チャンの腕にしがみ付く私を見て、首を傾げていた。

勘違いだよね。

目が合いホッと息をついていると、今度は同じ場所から微かだけど声が聞こえた。

『ねぇ‥今‥』

怖がる私を守るように後ろに隠してから、草むらを睨みつけた。


『おい、そこに誰か居るのか?居るなら今すぐ出てこい。出てこないならこっちから‥』

怒鳴り声に怖気ついたのか、話の途中で草むらが一斉に揺れた。誰がここにいるんだろう‥?気になった私は、俊チャンの腕から顔だけ出して目を凝らした。

その時、複数の人の動く気配に寒気を感じた。ビクビクしながら見ると、予想外の人達に声を失った。

『お前等‥』

唖然としている俊チャンとは反対に、向こうはニヤニヤしながらこっちに近づいてきた。
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