大好き‥だよ。
田中さんと居ると、私に勝ち目が無いことを思い知らされるから本当に苦しい。どうして俊チャンは田中さんを断ったんだろう?

可愛いし
料理も出来るし
思っていてくれるし

どうして??

田中さんの顔を見ながら考えていると、私の心を読み取ったみたいに話し出した。


『俊ね、他に好きな人がいるんだって。私には誰なのか教えてくれなかったけど。
だから昨日の帰りは一緒に帰らなかったの。結が帰った後、すぐに私たちも帰ったんだよ。
だってそうでしょ?私は暗号解けなかったしさ‥仕方ないよね?』

そこまで話すと、無条件に爽やかな笑顔で下駄箱を見つめていた。

『俊に思い伝えられて、今は全然後悔なんかしてないよ?だから‥結も頑張って。ライバルは多いんだから(笑)』

『3姉妹とか?』

『3‥姉妹って?』

きょとんとした顔で私を見てきた。

その顔を見て、「はっ!!」と思い「何でもないよ」とだけ伝えた。


『じゃあ‥ね』

『うん。今日までありがとう』

『‥うん!!』

車の窓から顔を出して、私たちが見えなくなるまでずっと手を振り続けてくれた。


『一度くらい‥下の名前で呼びたかったな』

『そうだね』

視界が少しぼやけていた。
同じ人を好きになっていなかったら‥ライバル視していなかったら‥もしかしたら、私たちはわかり合えたのかもしれない。

最後まで、彼女を羨ましく思った。
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