芽吹く前に

とりあえず、どこにあるのかわからない古着屋に行こうとケンタと辺りを散策した。
アーケード街から離れたところにその店はあった。
その店はフリルのついたビニール製の屋根が付いており、以前は違う店だったんだろうと思った。
若い、お洒落な店員さんが一人で切り盛りしているようだった。

店内に入ってもチラッとこちらを見るだけで何も言ってこなかった。

いらっしゃいませくらい欲しいな、とマコトは思った。

これにする。

えっそれ・・・?


マコトが手に取ったのは真紫のシャツだった。

やめなってマコトおばさんみたいだから・・・

そうか、カッコいいと思うけど・・・

それはないよ。

そうかな~

もうちょっと若者っぽいのがあるでしょ、いっぱい。

う~ん、じゃあドンなの。

これにしな!この青のネルシャツ!
かっこいいよ、これ。

う~ん、俺青って感じじゃないんだよね。

じゃあ、これにしな・・・

ケンタの選ぶ服はどれもピンと来なかったが、ネルシャツという響きに何故かひかれた。
これにする。この緑のネルシャツ。
マコトは覚えたばかりのネルシャツという言葉にひかれ黄緑と緑のチェックのネルシャツにした。

1980円です。

無愛想のに思えた店員さんだった、その声の感じからすると人が苦手なようにも思えた。

マコトはそういう人を見ると安心するのである。

「ありがとう。」

商品を手渡されたときに何故かその時、普段は言わないありがとうという言葉が自然に口から飛び出したのである
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