芽吹く前に

「ケンタッキー何で真面目にやるの?」

「俺、高校で勉強したいんだよ。
だから、真面目に頑張ってる。」


「そうなんだ・・・
(俺なんて、何も考えてないよ・・・)」


「これまでの分も、頑張って、今取り返さないと・・・」


「頑張るか・・・俺、頑張った事一度も無いや・・・」

「嘘だねっ、自転車のゴロ取る時頑張らなかった?
一年の時、絵の賞取った時も頑張らなかった?」

ケンタはマコトが頑張った時の事をそうやって思い出さそうとする。
だけど、マコトは自転車なんて誰でも乗れるし、絵だって自分自身が納得して取ったわけでは無かったから、その事を認めたくないと思っていた。

その時は単純に堕落したように、中途半端に生きることが格好の良いものだと信じていた。

「まぁ、俺の事は良いじゃん。
ケンタッキーが頑張るの応援するよ。」
「これからどうする。
遊びに行く?」

「今日は無理、親父が学校以外は外に出るなって言うから・・・」

「そうなんだ・・・」

何で、出たらいけないのか?それが聞きたかったけど、その時は聞けなかった。

重い話に耐えられないとかじゃなくて、なんて言ったら良いか、単純にわからなかった。

一緒にチャランポランな学校生活を送れていた前とは違う追いつめられた空気がマコトにもその時に伝わってきた。
このままじゃいけないんだろうなと・・・
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