乱華~羽をくれた君~【完】


俺はときどき小さい頃の夢を見る。

それはあまりにも残酷な思い出だったからなのか。


俺の母さんは優しく、頑張り屋だった。


それに引き換え親父は怠け者で、毎日飲んだくれては俺と母さんに暴力を振るった。


母さんは泣くことしかできない俺を必死に守ってくれていた。




でも小1の夏。

あの夏の一部分だけがどうしても思い出せない。


いつの間にか俺は、児童養護施設で他の子供と暮らしていた。


どうしてここにいるのか。


いつ母さんは迎えにくるのか。



何日待っても、母さんも、あの親父も来なかった。


・・・捨てられたのかもしれない。


しかし幼い俺にはどうすることもできなく、ただ毎日が過ぎて行った。




そして、13歳。


…やっと13歳。


一人で暮らしていくにはかなり厳しいと思う。

けど、早く施設を出たくてしょうがなかった。

別に施設に不満があるわけじゃない。

職員も優しくしてくれていたし、周りの奴らも良い奴ばかりだったし。


でも、誰も親の事は教えてくれなかった。

門限や規則が厳しくて自分で探すことも許されない。

早く本当のことが知りたかった。

母さんや親父は今どこにいて何をしているのか。



どうして俺を施設に預けたのか。




知りたかった。



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