乱華~羽をくれた君~【完】



「陸ーかえろっ」


六時間目のチャイムと共に教室の後ろのドアが開き、威勢の良い声が響いた。



「菊池―!まだ3組は終わってないんだぞー!」



担任が注意し、クラスに笑いが起きた。


俺の名前を呼んだのは、隣のクラスの菊池百合(きくちゆり)。


人付き合いが苦手で、つるんだりすんのが嫌いだった俺に、周りは自然と遠ざかって行ったが、広樹とこいつだけはなぜか俺に構ってくる。


モノ好きもいるもんだ。






「周りの子たちが陸としゃべりたいって!あたし、羨ましがられちゃった」




百合が80円の棒アイスを一口食べてそう言った。




「俺の友達も、お前と仲良くなりてーってさ~」




広樹もアイスを口にくわえながら縁石にのぼり、バランス良く歩いてみせる。




「へー・・」



「陸もったいない!!もうちょっとみんなと話せるようになれば、もっと友達増えるのにっ」



「その無口が直ればなぁ~あとすぐ睨む癖やめろよ~」


「うるせーよ、俺は別にこのままでいーし」




俺はそう言い放つと溶けかけたアイスを一気に口にほおばった。


< 129 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop