乱華~羽をくれた君~【完】
「陸ーかえろっ」
六時間目のチャイムと共に教室の後ろのドアが開き、威勢の良い声が響いた。
「菊池―!まだ3組は終わってないんだぞー!」
担任が注意し、クラスに笑いが起きた。
俺の名前を呼んだのは、隣のクラスの菊池百合(きくちゆり)。
人付き合いが苦手で、つるんだりすんのが嫌いだった俺に、周りは自然と遠ざかって行ったが、広樹とこいつだけはなぜか俺に構ってくる。
モノ好きもいるもんだ。
「周りの子たちが陸としゃべりたいって!あたし、羨ましがられちゃった」
百合が80円の棒アイスを一口食べてそう言った。
「俺の友達も、お前と仲良くなりてーってさ~」
広樹もアイスを口にくわえながら縁石にのぼり、バランス良く歩いてみせる。
「へー・・」
「陸もったいない!!もうちょっとみんなと話せるようになれば、もっと友達増えるのにっ」
「その無口が直ればなぁ~あとすぐ睨む癖やめろよ~」
「うるせーよ、俺は別にこのままでいーし」
俺はそう言い放つと溶けかけたアイスを一気に口にほおばった。