深海から見える灯【完全版】

15歳

「オレ、バンドやる事になった。ベース」

電話口からヒロの明るい声とボーンってベースの弦の音が鳴った。

「へー。誰とやるの?」

あたしも明るく言った。

「若葉とモリ、バンドやってたじゃん。ベースのヤツが辞めてさ、オレが代わりに入ることになったんだよな」

「でも、ヒロってベース弾けるの?」

「それを毎日毎日、学校にも行かずに練習してるんだよ。オレって努力家だよなー」

「モリくんと若葉も学校に来てないんでしょ?部活の子が言ってた。モリくんはギターだからわかるけど、若葉ってボーカルなのに学校休む必要あるの?」

「・・・・、お前、学校行ってる?」

ヒロはマジメな声で言った。

「うーん・・・、部活と後は必要な時だけね。」

どうやらあたしはクラスで「イジメ」遭ったらしい。
どうして急にそんな事になったのか、あたしには検討もつかない。
毎日消しても次の日には必ず机には「死ね」と書いてあった。
それでも、家に心配をかけたくなかったから我慢して毎日行っていた。
クラスの誰もあたしに話しかけてこない。
担任もわかっているはずなのに眼を背けてる。
そのうちに段々、行くのが億劫になって理由をつけては学校を休んだり、サボってるユキ達と一緒に過ごしたりするようになって、あたしは典型的な登校拒否になっていた。

変わらないのは、ヒロからの定期的な電話。

ヒロだって噂で聞いているか、学校に行った時にあたしの状況を知っていると思う。
でも、ヒロはあたしに「イジメられているのか?」とは一切聞かない。
まるでそんな事がなかったかのようにいつもと変わらずあたしに電話する。

この頃にはヒロとりっちゃんは別れていたようだ。

「あんまり上手くいかなくて振られた」

ヒロは笑いながらそう言った。

あたしのイジメが発覚したと同時にヤスくんとの奇妙な文通も終わった。
あたしはヤスくんの気持ちすら聞けずに「イジメ」という理不尽な理由で失恋したようだ。

「2人して失恋だねー」

あたしは笑った。ヒロも「そうだな」と笑っていた。


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