深海から見える灯【完全版】
あたしにはヒロの存在がありがたくて、口に出したらきっと泣いてしまうくらい尊くて本当に大切だった。


そして、あの時、教科書を拾ってくれた西も最近はヒロとつるんでるみたいで、ヒロから電話がくる時にたまに代わって喋ったりした。



「うらら、今度スタジオ練習見に来るか?」


ヒロの言葉に「行く」と言いかけて・・・・・頭にモリが浮かんだ。
一瞥した目は絶対零度に匹敵するくらいに冷たかった。怖かった。


「いやぁ・・・、あたしモリくんちょっと・・・、いやかなり苦手で・・・」


「え?何で?モリの何が苦手なんだよ」


「ほら、ずーっと前に若葉にモリくんの家に連れて行かれたじゃん。あの時、モリくん、すっごい怖くてそれから苦手・・・」


事実、イジメられる前に廊下を歩いていてモリが反対側から歩いてきたら反射的に壁に張り付くようにするか(これは学校のみんなもしてたけど)走って逃げるくらい避けるようにしていた。


「モリ、いいヤツだぞ。それでモリのギターはすげーんだ。最高!」


「あたしにはとても彼がいいヤツには見えないんだけど・・・」


ヒロはわかってないなーと言わんばかりにため息をついた。


「あのなー、オレにとってモリは最高の友達なんだぞ。お前、モリと気が合いそうなんだけどな。何でかなー、話してみろよ」


「え?無理!!殺されそうだもん」


あははは、と笑い声が聞こえた。


「殺すワケないだろ。バカか、お前は。お前、女だから多分優しいぞ」


「イヤ!これだけは断固として譲れない!あたしはモリくんとは関わらない人生を歩むって絶対決めてるもん」










まだ15歳になったばっかりのあたしは知らなかった。
それからずーっと先、15年後にモリと再会する事を。
それがすごく大きな出来事になるなんて全くこの時には想像できるわけがなかった。

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