深海から見える灯【完全版】

18歳

高3になってもあたしとサトは電話で変わらず話をしていた。


その日も朝方までサトと話をしていて、あたしは寝坊してしまった。

もう登校時間はとっくに過ぎていて、地下鉄の中はガランとしていた。

あたしが大きなアクビをすると

「口の中丸見え」

と声がした。見るとサトが笑っていた。

学校も含めて、サトが電話以外であたしに話かけてくるのは初めてだ。

「おはよ・・・」

あたしはドキマギして不自然な笑顔になった。

サトはあたしの隣に座ると「おはよってさっきまで話てたじゃん」と言った。

「そうだけど・・・」

何か緊張するんだけど!!

「電話以外で話すの初めてだね」

何か会話をしないととあたしは焦って言った。

「そうだっけ?あー、そうかもね」

足をパタパタ動かしてサトは言った。

「だって、内緒ってサト言ったじゃん」

「言ってないよ。シーってやっただけ」

指を口の前に当てた。

(それって内緒って合図じゃん!)

あたしは見る見る赤くなった。

「赤くなった。照れてる?」

ちょっと意地悪な笑顔だ。

「なってない!!」


しばらく沈黙があった。

「遅刻だねー」

サトがのんびり言う。

「そうだね」

「うーちんさ、ウチの高校に来て屋上上がった事ある?」

全く予想しない会話にあたしは首を傾げた。

「ないけど。だって屋上って上がれないんでしょ?禁止って・・・」

「屋上で遊ぼうか」

サトが言ったと同時に地下鉄は学校のがある停留所に止まった。

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