恋にきく魔法
音楽室は悲しくなるほどに静かだった。
教室のある本陳と離れているから、すごく静か。
それがお気に入りだったんだけど、今は悲しく感じる。
暖かいバルコニーに出ると、黄色の巾着から使いこんだ青色のお弁当箱を取り出した。
ぱかっと開けると、美味しそうな頼斗の作った品々が並んでいる。
それを口に運びつつ、ため息をついた。

朝の「姫」発言はもう取り消し?
可愛い愛想のある子といた方が楽しいもんね……。
あたしが今食べてる料理も……。
あたしだけのために作ってくれてるのかと思ってた。
でもそれはあたしの悲しい勘違いだったんだね。
昨日の「スキ」も、朝の「一緒に行きたい」も……ぜーんぶ、試験のためのウソ。
「ばかみたい……」
そう自分に言うと、なぜか涙が床に落ちた。
……これじゃ完全に失恋した子だね……。



< 26 / 32 >

この作品をシェア

pagetop