ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
人がパラパラと歩いている廊下を、あたしは走る。
大した事じゃない。
でも、1つだけ分からない事があって。
しばらく、話すらしてなかったのに…
ねぇ、西藤くん…どうして…?
「西藤くんっ!」
階段のちょうど手前。
あたしは西藤くんを呼び止めた。
「津田っ!?」
西藤くんはびっくりしている。
「あの…えっと…」
どうして西藤くんの前だと、よく言葉に詰まるんだろう。
だけど、ちゃんと言葉にしなくちゃ…。告白出来たんだもん、このくらい何て事ない。
「あの…」
あたしは俯いた顔を起こし、西藤くんを見上げた。
「どうして…あたしを誘ってくれたの?」
「-……」
西藤くんは、一瞬言葉を失ったように見えた。
だけど、すぐに笑顔を見せた。
「何言ってんだよ。友達誘うの普通だろ?」
「-……」
今度はあたしが言葉を失った。
「津田、大丈夫?じゃあ俺、約束あるから」
そう言って、西藤くんはあたしに背を向ける。
あ…!
「ま、待って!」
西藤くんは足を止め、ゆっくりと振り返った。
「…ありがとう」
「あぁ」
一度微笑んで、また階段を降りて行く。
すぐに西藤くんは見えなくなった。
ぽろっ
一筋の雫が頬を伝って落ちた。あたしはそれを慌てて手で拭う。
顔が…熱いよ。
数人が行き来する階段。
あたしは一目も気にせず、その場にしゃがみ込んだ。
涙が出たのは悲しかったからじゃない。
嬉しかったの。
“友達”って思ってくれている事が…。
告白して…ずっと喋るのが怖かった。
迷惑がられてるんじゃないかって…
嫌われたんじゃないかって…
でも、“友達”って言ってくれた。
嬉しい…嬉しいよ…。
「ありがとう」
あたしはもう一度呟いた。