ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
5組の教室のドアは、閉まっている。
「…」
他のクラスのドアって、何だか開けにくくて…あたしはそのまま教室の前で、西藤くんを待つことにした。
背中を向けた教室の中から聞こえる、賑やかな声…。
3年生になって、もう2週間くらい。
お昼と、放課後、あとたまに休憩時間。こうやって待つのも、慣れてきた。
5組前の廊下の窓から見える景色も、今や見慣れた景色。
窓から入る風は心地良い…。
ガラガラッ
ドアが開いた瞬間、てっきり西藤くんだと思ったあたしは、駆け寄る…が、
「あっ…!」
「うわっ」
違うと分かって、慌てて足を止めたけど、軽くぶつかってしまった。
「ごめんなさいっ」
「いやいやこっちこそ…」
教室から出て来たのは男子。
その男子は、あたしの顔を見るなり、ニヤッと笑った。
「…苺ちゃん?」
「え?あ…はい」
どうして名前を知っているのかと思ったけど、
よく考えてみれば、同じ学年であたしの名前を知らない人なんて、もういない。
「やっぱかわいーね♪裕也なんかやめて、俺にしない?」
「えっ?えっ!?」
突然の予想外の発言に、あたしは動揺を隠せず、あたふたする。
「大和、やめろって」
後ろから聞こえた声に、ドキッとした。
振り向くと、西藤くんが立っていた。