ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「噂の“苺ちゃん”と、1回話してみたかったんだって〜」
大和と呼ばれた男子は、西藤くんの肩を叩きながら笑う。
口では「バカ」と言いつつも、西藤くんは珍しく笑みを浮かべていた。
大和って言う人も背が高く、よく見るとかっこよくて、二人が並んだ姿は絵になる。
「でも、マジでかわいいじゃん。なんか…犬、みたいで♪」
「えっ!?」
犬っ!?
「あぁ…それ、俺も思う」
西藤くんまでっ!?
「苺ちゃん、俺の犬になんない?」
「なっ…!」
“なりません”って言おうとしたら、それより早く西藤くんに手を引っ張られた。
「悪りぃ。俺の彼女だから」
「っ!!−…」
西藤くんが笑顔で言った言葉に、あたしはドキッとして、声が出せなかった。
そのまま引っ張られて、あたしは歩いて行く。
「あっあのっ…」
階段を上りながら、あたしはやっと話かけた。
「何?」
「さっきの人は…友達?」
「あぁ、結城 大和。中学からのダチ」
「へぇー…」
そういえば、西藤くんの親しい友達って知らなかった。
中学からの友達…あたしと由紀ちゃんみたいなものだろうか。
何にせよ、西藤くんが友達に、あたしのことを“彼女”って言ってくれたのが、嬉しくてしょうがなかった。
「まぁちょっとバカだけど…良いやつだから」
「うんっ!」
西藤くんの友達、今度会ったらきちんと挨拶しなくちゃ。
ギィ…
少し重たい音が響く。
西藤くんはあたしの手を掴んだまま、階段先のドアを開けた。