ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

静かな廊下にパタパタと、足跡だけが響く。

あたしは走っていた。

頭をぶつけた所が、ほんの少しズキズキするけど、気にならない。

それより気になるのは…

“下駄箱の靴の意味”

それって何−…?

裕くんに聞いても、微笑むだけで教えてはくれなかった。

考えても分からなくて、あたしは玄関へと向かった。


あたしの靴は…

今日もまた、下駄箱の1番上に置かれてる。

“下駄箱の靴”っていうのは、おそらくこれのこと。

あたしが裕くんと付き合い出した頃から、下駄箱の1番上に、あたしの靴は置かれるようになった。

裕くんファンのイタズラだろうと、あまり気にしてなかったけど…

これに、意味があるの?

じっと靴を見つめるけど、やっぱり分からない。

とりあえず、あたしは靴を取ろうと、手を伸ばす…

と、他の人の手が一緒に伸びた。

誰−…?

「っ!?」

顔を見て、あたしは驚いた。

隣に立って、靴を取ってくれた人は…

「メグちゃん…」

メグちゃんは、ぎこちなく笑って、

「ごめんね…苺ちん。メグが…やってたんだ」

「え?」

あたしの靴を下駄箱に戻す。

「やっぱり…覚えてないよね」

いつもとは違う、とても静かな口調で、メグちゃんは話し始めた。
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