ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

「苺ってさ…」

何かを呟くように言う裕くんの顔を、あたしは見る。

「本当に犬っぽいよな」
「えっ!?犬っ!?」
「犬」

裕くんは笑う。

「犬抱きしめてるみてぇ」
「そんなに小さくないよっ!」

あたしは、頬を膨らませてみせる。
そしてまた、裕くんの胸に顔を埋めた。

反抗しつつ、犬でもいいって思ってる自分が居る。

ご主人さまが裕くんなら…あたしは幸せだから。


裕くんはそのままずっと、あたしを抱きしめてくれていた。

本当に何をするわけでもなく、ただ抱きしめてくれて…。

それが嬉しいような、少し残念なような…何だか不思議な気分になった。

だけどあたし達には、これが精一杯だったんだと思う。

子供みたいだけど…

これだけで充分だった−…。


ドキン…ドキン…

あたしの心臓の音は、鳴り止まない。

ドキン…ドキン…

聞こえるのは、裕くんの心臓の音。

くっついていると、二つの鼓動が溶け合うように感じた。

心地良い速度の音は、まるで子守唄みたいで…
あたしを眠りに誘う。

裕くん…

大好きだよ−…。
< 385 / 494 >

この作品をシェア

pagetop