ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「苺ってさ…」
何かを呟くように言う裕くんの顔を、あたしは見る。
「本当に犬っぽいよな」
「えっ!?犬っ!?」
「犬」
裕くんは笑う。
「犬抱きしめてるみてぇ」
「そんなに小さくないよっ!」
あたしは、頬を膨らませてみせる。
そしてまた、裕くんの胸に顔を埋めた。
反抗しつつ、犬でもいいって思ってる自分が居る。
ご主人さまが裕くんなら…あたしは幸せだから。
裕くんはそのままずっと、あたしを抱きしめてくれていた。
本当に何をするわけでもなく、ただ抱きしめてくれて…。
それが嬉しいような、少し残念なような…何だか不思議な気分になった。
だけどあたし達には、これが精一杯だったんだと思う。
子供みたいだけど…
これだけで充分だった−…。
ドキン…ドキン…
あたしの心臓の音は、鳴り止まない。
ドキン…ドキン…
聞こえるのは、裕くんの心臓の音。
くっついていると、二つの鼓動が溶け合うように感じた。
心地良い速度の音は、まるで子守唄みたいで…
あたしを眠りに誘う。
裕くん…
大好きだよ−…。