ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
……プチンッ…
簡単に切れそうにないボタンを、佳奈ちゃんは爪を使って、器用に取ってゆく。
……プチッ
「取れた…」
2個目のボタンを掌に乗せて、佳奈ちゃんは立ち上がる。
そして、1つを翔くんに渡した。
「苺先輩、ありがとう♪」
「ありがとうございます」
「いえいえっ!」
あたしのボタンを欲しい人が居るなんて、何だか不思議。
「あ…本当にそろそろ行かなくちゃ…」
佳奈ちゃんが腕時計を見ながら、少し心配そうに言う。
「わかったよ」
翔くんは返事をして、あたしを見る。
「苺先輩、本当にありがとうございました。俺、先輩に出会って本当に良かった」
別れの言葉に、胸がきゅっと苦しくなる。
「卒業しても頑張ってください」
「…はい」
あたしは微笑んで頷いた。
「俺はずっと、苺先輩を応援してるから」
翔くんも微笑む。
「ありがとう」
翔くんは頷いて、佳奈ちゃんの方へと向き直し、顔だけこっちに向ける。
「先輩、じゃあまた!」
「…またね!」
返事をすると、翔くんは佳奈ちゃんの手を引いて、走り出した。
「えっ…」
びっくりした様子の佳奈ちゃんは、頭を一回こっちに下げた。