ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「全部…なくなっちゃったんだね」
あたしは苦笑する。
「あぁ…追い掛けられて、むしり取られた」
「そっかぁ…」
「何?嫉妬してんの?」
裕くんは、ふっと笑った。
嫉妬…。
こんなことで、嫉妬してしまうあたしは心が狭い。
でも…
あたしだって欲しかった。
「…してないよっ!」
素直に“欲しかった”と言えないあたしは、強がって嘘をつく。
「ふーん?」
疑う裕くんに、
「してないってばっ!」
ちょっとむきになる。
「でも、俺は嫉妬するな」
「え…?」
意味が分からなくて、あたしは少し首を傾げた。
「苺のボタンも、なくなってんじゃん?」
言われて自分の方を見ると、ボタンのなくなった上着は、前開きになっている。
「あ…」
そうだった。
あたしのボタンも、なくなっちゃったんだ。
「誰にやった?」
裕くんは少しずつ、あたしをフェンスの方へと追いやる。
「えと…メグちゃんと…2年生…」
「2年生って?」
カシャンッ
あたしはフェンスに、背中をぶつける。
翔くんって言えば、裕くんはやっぱり傷ついてしまうかな…?
裕くんは、あたしを捕まえたとばかりに、フェンスに手をかけた。
ち…近い…。