ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「何組?」
「へっ?」
走りながら聞いたせいで聞こえなかったのだろうか、俺はもう一度「何組?」と、質問した。
「えと…5組…ですっ」
「5組?同じ!!」
何て偶然なんだろう。
どうやら彼女は、クラスメートらしい。
桜並木の坂を登ると、中学より大きな校舎。
門をくぐって玄関の方を見るけど、誰も居ない。
「ヤバイじゃん!」
やっぱり遅刻か…?
そう思うと、自然と足も速くなる。
「あのっ…下駄箱っ」
女の子がやっと自分から口を開いたと思ったら、遅刻するっていうのに、とても呑気なことを言い出した。
「あぁ?どこか分かんねーだろっ!自分の探す時間ねーよ!」
焦ってしまうせいで、ついつい口調が乱暴になる。
靴を脱ぎ捨てて、階段を上がる。
1年は3階だったはず。
「あっ、あのっ…あのっ…」
息を切らしながら、女の子が何か言おうとする。
並木道からずっと走って来ているし、さすがに疲れたのだろう。
だけど、ここで足を止めるわけにも行かない。
「頑張れよ!あと少しなんだから!」
励まして、手を引く強さを、ほんの少しだけ強めた。