ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

そして、真っ直ぐあたしに向き直る。

「麗奈ちゃん、これからどうぞ、よろしくお願いします」

沙季さんは深々と頭を下げた。

「っ…」

決して嫌なわけじゃない。

だけど、穏やかな気持ちに、ほんの少しの波紋が広がった。

自分でもよく分からないけど、一瞬だけ、泣きたくなった。

きちんと返事が出来ないあたしに、沙季さんは頭を上げる。

「ふつつかな姉ですが、仲良くして下さい」

「…はい」

にっこりと笑う沙季さんに、あたしも笑顔で頷いた。



大好きなお兄ちゃんは、この人と結婚する。

失ったものは恋心。

だけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんのままで。

得たものは、新しい家族。

沙季さんは今日から、あたしのお姉さんになる。


コンコン、キィ…

不意に音がして見ると、ドアから入って来たのはお兄ちゃん。

「父さん達もうすぐこっち来るよ…って、二人とも向かい合って何話してたんだ?」
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