ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「大好きなお兄ちゃんは、沙季さんに取られちゃいましたから」
「えっ!」
顔を赤くする沙季さんに、あたしは「冗談ですよ」と、笑う。
いつから…
自分の気持ちが“冗談”だと、笑えるようになったのか。
昔は自分の気持ちを隠すことが、どうしようもなく辛かったはずなのに…。
「沙季さん…」
今、こうして穏やかな気持ちで沙季さんを見れるのは、
あたしがお兄ちゃんを、ちゃんと“兄”として、見れている証拠。
そして…
「お兄ちゃんを、よろしくお願いします」
「はい」
沙季さんは1回頷くと、やんわりと微笑んだ。
沙季さんをお兄ちゃんのパートナーとして、認めている証拠だ。
「じゃあ、あたしはそろそろ…」
時計を見て、控室を出て行くことを決める。
「麗奈ちゃん、待って」
言うと、沙季さんはスタイリストさんの手を止めてもらい、ゆっくりと立ち上がった。