ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
ガラガラガラ…
教室の引き戸を開けて、誰かが入って来た。
あたしは反射的に、入って来た人を見る。
すらりと伸びた手足に、茶色がかった少し長めの髪。はっきりとした輪郭に整った顔立ち。ブレザーのネクタイは少し下がり気味。
彼は同じクラスで、学校で1、2を争う程カッコイイ。女子から陰ながら『王子』等と呼ばれていた。
「何してんの?」
先に口を開いたのは彼。
「あ!えっと…黒板に手が届かなくて…」
また…からかわれるかな…?
そう思ったけど、「そっか」と一言言うと、彼はあたしの手から黒板消しを取って、さっと黒板を消した。
黒板にはもう【問1】という字はない。
「あ、ありがとう!えと…えと…」
やばいよ、名前が出てこない。
「西藤裕也」
彼が黒板消しを置いて、こっちを向いた。
「背…高い…」
「え?」
「ごめんなさい!ちょっと思った事が口に出ちゃって」
なんだか急に恥ずかしくなって、急いで黒板から離れてカバンを持つ。
「西藤くん、本当にありがとう!」
もう一度お礼を言って、あたしは教室を後にした。