ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*
「断られたりしないかなぁ…」
コーヒーカップを両手で包み込むと、じんわり暖かい。
「大丈夫だって、王子と苺イイ感じじゃん」
「そんな事ないよっ!」
「とか言って、王子と1番仲良い女子って苺だと思うよ?」
「えっ…」
手が熱くなって、コーヒーカップから離した。
「だってさ…王子、今隣の席の植田さんと話してないんだよ?」
「そうなの?」
「うん。挨拶すらしてないよ」
チョコレートパフェのチョコレートソースで、くたくたになったシリアルを、スプーンでつつきながら由紀ちゃんは続ける。
「まぁ植田さんは何度か王子に挨拶しようとしたみたいだけど、王子は無視って言うか気付かないって言うか…」
「へーぇ…」
席が西藤くんより、かなり前で離れているから、そんな事に気付かなかった。
植田さんには悪いけど、何だか嬉しい…。
藤堂先輩の次に近い存在はあたしなのかな…なんて、自意識過剰になりそうだ。
「って、由紀ちゃんよく見てるね?」
「まぁね。そういう訳だから自信持って頑張りなって!」
「うーん…。じゃあ、頑張って誘うだけ誘ってみよっかなぁ」
由紀ちゃんにここまで言われたら、無理なんてもう言えない。
「うんっ!苺、がんばりなよ♪」
「…うん」
コーヒーカップを口へと運ぶ。
ココアはいつの間にか、ぬるくなっていた。