ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

一年生。

♪苺side♪


「はぁっはぁ…っ遅刻しちゃうっ…!」

あたしは小走りで、学校への道を急ぐ。
始めは全力で走っていたのだが、途中から疲れて、小走りになっていた。

1限は入学式だったよね…。
遅刻したら先生に怒られちゃう!

せっかく無事に2年生になれたのに!


そう、“1月は行く・2月は逃げる・3月は去る”なんてよく言うけれど、まさにその通りで…

あたしは昨日、2年生になった。

学校へと続く坂は、桜の木が並んで植えられていて、ピンクのかわいい花びらが、ひらひらと舞い落ちる。

きれい…。

足の早さを弱め、昨日も見たはずなのに、今日も見入ってしまう。

すると、誰かの足音が聞こえた。

足音の方に振り返ると、男子生徒がこっちに向かって走って来ている。

遅刻かな…?

「…ってあたしも遅刻っ!!」

声を上げた時、ちょうどその男子が通り過ぎようとして…

「あー待って!」

無意識に言ってしまった。

「…は?」

やはり、その男子は足を止めた。

「えと…あの…あー…」

すみません、何もないです。
なんてあたしが言えるわけもなくて、うつむいた。

急いでるのに怒るよね…もし、イカつい兄ちゃんで、ボコボコにされたらどうしよう…。

「…わかった!」

突然の言葉に顔を上げる。

………えっ?

「あんた、どこ行けばいいか、分からないんだろっ?」

そう言うと、ぐいっとあたし手を引っ張って、彼は走り出した。

びっくりしたのは、彼の言葉にではなくて…

彼の背。

きっと由紀ちゃんと同じくらいか、少し背が低い。


彼は、“男”としては小さかったんだ…。
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