ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

手を引っ張ってくれているからか、坂なのにさほど疲れない。

手を引っ張っぱられる、この感じ…

どこかで………。


一人の顔が浮かんで、考えるのをやめた。

もう諦めたのだから…

考えちゃダメ。


「何組?」
「へっ?」

考え事をしていたから、いきなり話しかけられてびっくりした。

「何組?」
「えっと…5組…ですっ」
「5組?同じ!!」

え?こんな人…居たっけ?


学校に着くと、チャイムはもう鳴ってしまったみたいで、生徒はもういない。
いつもは遅刻する生徒を、待ち構えている先生も、今日は入学式のためかいない。

「ヤバイじゃん!」

ぐいっと力が更に強くなり、走る速さも増す。

「あのっ…下駄箱っ」
「あぁ?どこか分かんねーだろ!自分の探す時間ねーよ!」

靴をその場に脱ぎ捨てて、校舎へ上がる。

どこか分からない?

もっもしかして…

1年生っ!?


あたしの思った事は間違ってはいなかったらしく、2年の教室がある2階を過ぎ、3階へと上がって行く。

「あっ、あの…あのっ…」

ダメだ。走るのに着いて行くのが精一杯で、言葉が言葉にならない。

「がんばれよ!あと少しなんだから!」

えぇー!?

あと少し…その言葉通り、あっという間に、1年5組の教室の前まで来ていた。

ガラガラガラッ

彼によって、教室のドアは勢いよく開けられた。

「…………」

1年生の視線が突き刺さる。
痛い…。

「…津田さん?」

言ったのは先生。
1年生の時、現代文を教えてもらった先生だった。

「1年生を連れて来てくれたのかな…?」
「あっ…いえ…」
「そうよ…ね」

先生は首をかしげる。
図的にどうやって見ても、あたしが連れて来られた感じだ。
彼は未だに、あたしの手首を掴んだまま。

「とにかく津田さん、早く自分の教室戻りなさい」
「はいっ!」

「お前…5組って言わなかったか?」

今度は彼が首をかしげた。

「あたし…2年です」
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