授 か り 人

 旅館から離れて暫く歩いているが、どこに向かうのかさっぱりわからない。

「雷志、さっきの女から何を聞いたんだ?」

 先頭を歩いていた雷志は左後ろを歩く氷斗に軽く顔を向ける。

「山道ですれ違った女のいる場所」

 と答えた。

「じゃあ、俺様が見た女は、幻覚でもなんでもない、ここの町娘なのか?」

 雷志の肩を片手でしっかり掴み、期待の眼差しで凝視する。

「いや、そうゆうわけでも無いらしい。」

 その返事に、がっくりと肩を落として『だよなぁ…』と落ち込む氷斗。

「旅館の女性から聞いた話だと、氷斗が倒れた山道、あの辺りで女性を見たと言う噂は流れているらしい。
 しかし、氷斗の時のように攻撃してくるわけでもなく、誰かを探している風だって言ってた。」

 そこまで言って雷志は一瞬氷斗に視線を合わせた。

「探してるのが俺様ってこと……か。」
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