授 か り 人
「これでも思い出してくれないのかい?」
 泣きわめく赤子に頬ずりをしながら男性は嘆く。

 三人の意識が途絶えそうになった時、火栄の脳裏に一つの言葉が浮かんできた。


「美しきさえずりよ、我に力を与えたまえ!!!」


 そう叫んだ火栄の身体はゆっくりと地面に降り立ち、氷斗と同様に体のサイズが変わる。

「あなたはオレが消したはずです」

 火栄の左腕がほのかに光ると、その手の先から何かが生まれ出でる。

「そう、思い出してくれたんだね」

 男性は泣きわめいている子供たちを自分の周りへと集め始めた。

「さぁ、さえずりましょう」

 火栄が生み出したものは二十センチほどの、グラデーションが美しい一羽の鳥だった。
 その鳥が美しい声で鳴き始めると、子供たちは次第におとなしくなり、霧とともに消えてゆく。

子供たちと赤子が消えて残った男性は優しく微笑みささやく。

「最期はどうだったか教えてくれないか」

 火栄は鳥を羽ばたかせる。
 足を踏み込み男性に向かって走り出すと美しい鳥は一本の剣となって火栄の元へ戻ってきた。

 しっかりと剣を握った火栄は男性の胸に突き立てる。

「また会えて嬉しかったよ」

 そう言って男性は霧となり、ゆっくりと晴れ間が広まって今の出来事が嘘だったかのように晴天が四人を迎えていた。
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