黒い男と白い女
【１】出会いが終わりへ
「斉川、……斉川くん」


まただ。


「斉川くん、聞いていますか？」


お前の目の前にいるんだぞ、聞こえてるに決まってるだろ。


「誰か、斉川くんを起こしてやってくれないか？」


隣に座る女学生の手が肩に触れる前に俺は立ち上がった。


「……起きていたかね」


年老いた教授が眼鏡を外してこちらに近づいてくる。


「斉川くん、最近講義に身が入らないようだね。どうだい、単位ならあげるから講義を受けなくてもいいが？」


この押し付けな決まり文句もこれが初めてではない。


「……すいません。頭痛が酷く頭を伏せていました」


「そうかね。……なら今日のところは帰ったらどうだね？」


「そうさせて頂きます」


机の上に出されていたものを乱暴に鞄にへと放り込む。


その間に教授は教壇へと戻り何事もなかったかのように講義を再開した。


「…………」


俺の周りの学生はヒソヒソと今のやりとりを見てなにかを話している。


俺は静かに教室を後にした。
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